メニュー 閉じる

演色性とランプ効率の向上を目指した高輝度アークランプの開発

電気電子通信工学科 岩尾 徹

はじめに

高輝度アークランプは,大規模空間の照明として利用が可能である。この特長を生かし,災害時の緊急避難所の照明などにも利用されてきた。しかし,青みがかっているといった光色の不満やランプ効率(全光束/ランプで消費される電力)が悪いことから,更なる技術開発が必要である。この問題を解決するための1つのアイデアとして,従来の線スペクトルの組み合わせではなく,連続スペクトルと線スペクトルを同時に組み合わせることがあげられる。
現在までに著者らは,アークの温度分布を適切に制御することで,連続スペクトルと線スペクトルを同時に組み合わせることが可能となり,演色性(太陽光と比較して物を見たときの色の見え方)やランプ効率の向上ができることを計算により明らかにしてきた(1)。本研究では,これらの知見を基に,演色性とランプ効率の向上を目指した高輝度アークランプの開発を行った。

実験装置の設計と製作

アークは超高温であることから,本研究の目的を満たすランプを実現するためには,器壁(パイレックスガラス)の冷却法とアークにより生じる高温ガスの流れを制御する方法の確立が必要である。これらの課題を解決するために,図1に示す水渦流冷却型の器壁安定化アーク発生装置の設計と製作をした。具体的には,器壁の内側に水渦流を旋回させることにより器壁を冷却する方法と水渦流の排出方法,並びに,高温ガスの流れの制御方法と排出方法の確立を図り,この知見を生かした設計と製作を行った。また,目的に沿った器壁径やアーク電流を決定するため,電磁熱流体シミュレーションの計算手法の開発を行った。なお,本実験装置で用いた器壁径は変更が可能であり,今回は,直径(内径)が41 mmのものを用いた。

図1 水渦流冷却型器壁安定化アーク発生装置

実験装置の性能確認

1.水渦流と高温ガス流の制御

図2に水渦流の様子とアーク形状を示す。水渦流は,器壁への流入口を工夫することで,器壁内面に圧力がかかりながら旋回するようにした。また,水渦流の排出が間に合わない場合,器壁内部に水渦流がたまってしまう。そこで排出口を工夫しスムーズな排出を実現することで,水渦流の流量を適切に調整した。本実験では,アークはトーチノズルからのガス(流量3 slmのアルゴン)によっても安定化させている。このガス流量や器壁内部の圧力が高くなると,水渦流が器壁に沿って流れやすくなり,流量も増加した。
アーク発弧は,電流Ⅰを40~80 A,電極間距離Lを10~30 mで行い,安定なアーク形状を得ることができた。なお,アーク発弧時は,超高温アークにより器壁内の圧力が瞬間的に増加するが,器壁が破損することなく,ガスの流れの制御と排出を行うことができた。

(a) 水渦流
(b) アーク形状
図2 水渦流の様子とアーク形状(I= 60 A, L= 10 mm)

ただし,70 A以上になると,高温ガスの排出をスムーズに行うことができず,陽極と陽極ノズルの間にアークが発生したためか,ノズルが加熱されてしまうことがあった。したがって,今後,更に大電流化を図るためには,陽極と陽極ノズルの絶縁距離の調整や陽極ノズルの形状に関する検討を進めていく必要がある。

2.照度とスペクトル強度分布の測定

本装置における演色性とランプ効率の性能確認の1つとして照度とスペクトル強度分布の測定を行った。図3に照度の電流依存性を,図4にスペクトル強度分布(555 nmを中心に±38 nm)の電流依存性を示す。結果として,照度は電流の増加に伴い増加し,累乗近似における電流のべき乗は2.27となった。器壁安定化アークの放射パワーは電流の2.0乗(2)であり,本結果は照度ではあるものの同様な値となった。また,スペクトル強度に関しては,電流の増加に伴い連続スペクトルが増加し,連続スペクトルと線スペクトルを同時に組み合わせることが可能となった。このことから,アークの温度分布を適切に制御でき,演色性とランプ効率の向上が示唆された。

3.電磁熱流体シミュレーション手法の開発

本研究では,2章で述べたようにシミュレーション手法の開発を行った。結果として,手法の確立ができ,アルゴンでは,演色性は(電流/器壁径)2,ランプ効率は(電流・器壁径2)でまとめることができた。

まとめ

本研究では,演色性とランプ効率の向上を目指した

図3 照度の電流依存性 (L= 10 mm)
図4 スペクトル強度分布の電流依存性 (L= 10 mm)

高輝度アークランプの開発を行い,安定したアークを発生させることができた。また,照度やスペクトル強度分布の結果から,連続スペクトルと線スペクトルを同時に組み合わせることが可能となり,演色性やランプ効率の向上が示唆された。更に,器壁安定化アークのシミュレーション手法の確立ができ,演色性やランプ効率を電流と半径を基にまとめることができた。以上より,光色の改善やランプ効率の向上のニーズに応えることができる高輝度アークランプを開発することができた。
今後は,更に電流や器壁径の検討を進め,低コストで高効率,かつ,人に安心感を与えることができる光色を持つ大規模照明を開発していきたい。

文献

(1) 光安他:電学論, 133-B, pp. 129-136 (2013)
(2) 稲葉他:電学論,118-A, pp.10-15 (1998)

【成果発表】 (計1件)

[1] 光安枝里子,岩尾徹,湯本雅恵,スカンジウム蒸気が混入した器壁安定化アルゴンアークの温度分布と放射パワー,電気学会 電力・エネルギー部門大会,pp.49-50 (2013)

【成果発表予定】 (計3件)

[1] Toru Iwao, Eriko Mitsuyasu, Shinhi Yamamoto, Motoshige Yumoto, Control of Spectrum for Improvement of Color Rendering Affected by Metal Vapor Mixed with Wall-Stabilized Argon Arc, IEEE ICOPS (2014)

[2] 岩尾徹,山本真司,柳健太郎,湯本雅恵:水渦冷却型高輝度アークランプの照度計測,電気学会 放電・静止器・開閉保護合同研究会 (2014)

[3] 山本真司,柳健太郎,岩尾徹,湯本雅恵:水渦流安定化アルゴンアーク発生装置の開発,電気学会 電力・エネルギー部門大会 (2014)

2020年4月、東京都市大学 工学部は「理工学部」へ名称変更いたしました。
併せて、工学部からの改編にて「建築都市デザイン学部」を新設いたしました。