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東京都沿岸と多摩川沿川における浸水災害の危険度と脆弱性に関する基礎的調査

都市工学科 三上貴仁

研究背景と目的

東京湾の湾奥部に位置する東京都沿岸や多摩川沿川下流の地域は,津波や高潮といった沿岸からの大規模な浸水災害が発生する可能性を有している.しかし,長い間,大規模な浸水災害を経験しておらず,被害の実態が明らかとなっている災害の事例は数例程度に限られている.さらに,災害の事例が少ないことに加えて,この数十年間で沿岸の地形や土地利用が大きく変化したため,津波や高潮といった災害に関する住民の意識も薄れてきており,災害の発生時や被害からの復興時の具体的なイメージを持つことが難しくなっていることが危惧される.この数年の間に国内外の他の地域で発生した大規模な浸水災害を契機として,あらためて東京湾で生じ得る浸水災害について検討し,住民にとってわかりやすいかたちでその災害のイメージを作り上げることは,重要なテーマであると考えられる.
そこで,本研究では,東京湾の中でも東京都沿岸と多摩川沿川における津波や高潮といった浸水災害を対象として,その災害イメージの形成に必要な基礎的な情報の整理・分析を行うことを目的とする.その際,津波・高潮の高さや到達時間といったhazardの程度を示す「危険度」と,人口構成や避難場所の特性といったvulnerabilityの程度を示す「脆弱性」の双方の側面に着目する.こうすることで,危険度(hazard)が小さくても脆弱性(vulnerability)が高いために被害が予想される地域等も把握することができ,より正確な災害イメージの形成に役立てることができると考えられる.

研究成果の概要

本年度取り組んだ2点の研究テーマについて,以下にその概要を述べる。

(1)東京都沿岸で想定されている地震津波シナリオの整理

東京都では海(東京湾)に面する自治体が6区(大田区、品川区、港区、中央区、江東区、江戸川区)あり、まず、それぞれの自治体がWebサイトにおいて津波に関する情報をどのように提示しているかを整理した。その結果、東京湾沿岸での津波による被害が記録されている1703年元禄関東地震による津波については多くの自治体で明示されているが、それ以外の地震による津波については情報の有無や提示の仕方にばらつきがあることがわかった。そこで、東京湾沿岸に津波による被害を及ぼし得る地震を複数ピックアップし(1605年慶長地震、1703年元禄関東地震、1854年安政東海地震、1923年大正関東地震、東京湾北部地震、南海トラフにおける巨大地震)、それらすべてについて津波の伝播シミュレーションを行い、それぞれの自治体での第一波津波高さ、第一波到達時間、最大津波高さ、最大津波到達時間等の指標を算出し比較した。その結果、多くの自治体で明示されている元禄関東地震による津波に匹敵する高さの津波が生じる地震は複数あり、また、それぞれの地震における第一波到達時間や最大津波到達時間が異なることがわかった。東京湾沿岸に影響を与え得るさまざまな地震津波シナリオについてその特徴を整理して広く情報を提示し、住民の関心を高め、正確な理解を広げていくことが重要であると考えられる。

(2)多摩川下流地域における浸水災害時の避難困難度の分析

東京都では海(東京湾)に面する自治体が6区(大田区、品川区、港区、中央区、江東区、江戸川区)あり、まず、それぞれの自治体がWebサイトにおいて津波に関する情報をどのように提示しているかを整理した。その結果、東京湾沿岸での津波による被害が記録されている1703年元禄関東地震による津波については多くの自治体で明示されているが、それ以外の地震による津波については情報の有無や提示の仕方にばらつきがあることがわかった。そこで、東京湾沿岸に津波による被害を及ぼし得る地震を複数ピックアップし(1605年慶長地震、1703年元禄関東地震、1854年安政東海地震、1923年大正関東地震、東京湾北部地震、南海トラフにおける巨大地震)、それらすべてについて津波の伝播シミュレーションを行い、それぞれの自治体での第一波津波高さ、第一波到達時間、最大津波高さ、最大津波到達時間等の指標を算出し比較した。その結果、多くの自治体で明示されている元禄関東地震による津波に匹敵する高さの津波が生じる地震は複数あり、また、それぞれの地震における第一波到達時間や最大津波到達時間が異なることがわかった。東京湾沿岸に影響を与え得るさまざまな地震津波シナリオについてその特徴を整理して広く情報を提示し、住民の関心を高め、正確な理解を広げていくことが重要であると考えられる。

図1 多摩川下流地域の人口と浸水想定区域に基づく丁目ごとの避難困難度

今後の展望

危険度(hazard)の把握の点では,歴史災害のさらなる分析と,現在進めている東京湾に高潮災害をもたらした大正6年の台風と似た経路を通り各所で高い水位を記録した2017年台風21号(図2参照)の分析等を通して,東京湾での津波・高潮の特性の理解を深めたい.また,本年度整備した実験設備を用いて津波・高潮の河川遡上等についても検討を進めたい.
脆弱性(vulnerability)の把握の点では,現在検討を進めているマルチエージェントシステムによる避難シミュレーションを用いて分析を行うことで,地域ごとの災害時における避難に関する問題点を具体的に把握し,さらには,それらの改善策の比較検討に取り組んでいきたい.

図2 2017年台風21号通過時の水位の変動

関連する成果発表

1) 坂上主・三上貴仁(2018):巨大地震発生時の歩車混合津波避難シミュレーション,第45回土木学会関東支部技術研究発表会,山梨大学,II-37.
2) 池本和也・三上貴仁(2018):GISを用いた多摩川沿いにおける浸水災害時の避難困難度の評価,第45回土木学会関東支部技術研究発表会,山梨大学,II-64.

2020年4月、東京都市大学 工学部は「理工学部」へ名称変更いたしました。
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