メニュー 閉じる

AlN-Al2OC 系新規蛍光材料の作製と評価

エネルギー化学科 小林 亮太

研究の背景と目的

窒化アルミニウム(AlN)は優れた機械的特性と高熱伝導性、電気絶縁性を持つ材料であり、パワー半導体用の放熱基板として応用されている材料である。近年、AlNはディスプレイや照明用の高信頼性の蛍光体のホスト物質としても注目されており、ユーロピウムイオン(Eu2+)ドープによる青色発光[1]やマンガンイオン(Mn2+)のドープによる赤色発光[2]が報告されている。AlNは熱的、化学的に安定であり、蛍光体のホスト材料として優れた特性を持っている。しかし、AlN蛍光体における発光特性の制御は、ドープするイオンの種類・濃度を変化させるという方法が基本であり、細かな発光制御に必要と考えられるホスト側の結晶構造の制御はこれまでに検討されていない。
本研究では、AlN蛍光体の発光特性の制御の一環として、AlNに類似した結晶構造を持つ酸炭化アルミニウム(Al2OC)、およびAlNとAl2OCの固溶体[3]に注目した。Al2OCの格子定数はAlNより2%程度大きくなっており[4]、結晶格子内の空間も大きくなっている。
Al2OCにAlNの場合と同様に発光イオンをドープできれば、結晶格子と発光イオンとの相互作用が弱くなり、発光波長が長波長側にシフトすると予想した。さらに、AlN-Al2OC固溶体に発光イオンをドープできれば、発光特性のより細かな制御も可能になると考えた。

図1 AlNおよびAl2OCの結晶構造と発光特性の制御方法

研究方法

本研究では、酸化アルミニウム(Al2O3)をアルミニウム(Al)、炭素(C)の混合物を高温で反応焼結させるプロセスを利用することでAl2OCの合成を行った。その後、酸化ユーロピウム(Eu2O3)を原料に少量添加した系の合成と発光特性の評価を行った。原料の組み合わせ方や混合プロセス、焼結プロセスを細かく検討することでAl2OCの相純度の向上を図った。さらに、原料の半分をAlNで置き換えて同様の検討を行うことで、AlN-Al2OC固溶体の合成を試みた。

研究成果

1.Al2OCの合成プロセスの検討

図2にAl2O3,Al,Cを一軸ボールミル混合し、反応焼結して作製した各試料の構成相をXRDで同定した結果を示す。1400℃-1h焼結、1750℃-2h焼結ともAl2OCは全く見られず、Al4O4CとAl4C3が主相であった。一度焼結した試料を粉砕・再焼結するとAl4O4Cが消失し、Al2OCが主相図1AlNおよびAl2OCの結晶構造と発光特性の制御方法となった。粉砕・再焼結によってAl,C,Oの均質性が向上し、Al2OCの相純度向上に寄与していることが示唆された。

図2 試料のXRDパターン: (a)1400℃-1 h,(b)1750℃-2 h,(c)1400℃-1h焼結後に1750℃-2

2.EuイオンをドープしたAl2OCおよびAlNAl2OC固溶体の合成と発光特性

図3に一軸ボールミル混合粉にEuをAl:Eu=1.96:0.04の化学組成になるように添加し、遊星ボールミルを用いて粉砕混合した。上記の混合粉末を反応焼結させて得られた試料の構成相を図3、発光している様子を図4にそれぞれ示す。いずれもAl2OCが主相であるが、通常はAl4C3が他相として検出された。また、1750℃焼結では30°付近にEuOに類似したピークも見られた。一方、遊星ミルの回転数を通常よりも上げて粉砕した後に1800℃で焼結した場合、Al4C3は完全に消失してほぼAl2OC単一相となった。回転数を上げた結果、原料が微粉砕されて反応焼結も促進され、結果として相純度が大きく向上したと考えられる。試料の発光色は青色から水色になる場合が多いが、Al2OCの相純度が高い試料では緑色から黄緑色の発光が見られ、発光強度も増大する傾向が見られた。

図3 遊星ミル混合粉で合成したEu添加試料のXRDパターン:(a)1750℃-4h,(b)1800℃-4h,(c)1800℃-4h(高回転数

今後の展望

Al2OCが新たな蛍光体のホスト物質として有力であり、発光特性の制御にも役立つことが確認された。一方で、AlN-Al2OC固溶体は現段階では部分的にしか生成しておらず、今後も合成実験を進めていく。蛍光スペクトルの測定や結晶構造解析についても実施し、Euのドープ状態や発光メカニズムの解明につなげていく。

図4 遊星ミル混合粉で合成したEu添加試料の発光(右は熱処理後に再焼結し、さらにAl2OCの相純度を上げた試料)

参考文献

[1]N.Hirosakietal,App.Phys.Lett.,91,61101(2013).
[2]X.J.Wangetal,DaltonTrans.,43,6120(2014).
[3]C.Qiuetal,J.Am.Ceram.Soc.,80,2013(1997).
[4]J.M.Lihrmannetal,J.Am.Ceram.Soc.,72,1704(1989).

関連する研究成果一覧

発表論文

1)Ryota Kobayashi, Yuuki Fukutomi, Takayuki Takagi, Synthesize of AlN needles by nitridation of Al-Simelt, Journal of Crystal Growth, submitted
2)Ryota Kobayashi, Yoshihiro Nakajima, Kenji Mochizuki, Koichi Harata, Takashi Goto, Kentaro Iwai, Junichi Tatami, Densification of AlN Ceramics by Spark Plasma Sintering under 1550 oC, Advanced Powder Technology, in press (2016).
3)Ryota Kobayashi, Katsuyoshi Oh-ishi, Rong Tu, Takashi Goto, Sintering behavior, Microstructure, and Thermal Conductivity of Dense AlN Ceramics Processed by Spark Plasma Sintering with Y2O3-CaO-BAdditives, Ceramics International, 41, pp1897-1901 (2015).

学会発表

4)小林亮太, 高熱伝導性を持つ窒化物セラミックスの低温焼結と組織制御, 第25 回日本MRS 年次大会, 横浜 (2015). 招待講演
5)Ryota Kobayashi, Yoshihiro Nakajima, Kenji Mochizuki, Koichi Harata, Takashi Goto, Kentaro Iwai, Junichi Tatami, Densification of AlN Ceramics by Spark Plasma Sintering at 1450oC, The 5th International Conference on the Characterization and Control of Interfaces for High Quality Advanced Materials and the 51st Summer Symposium on Powder Technology, Okayama (2015).

2020年4月、東京都市大学 工学部は「理工学部」へ名称変更いたしました。
併せて、工学部からの改編にて「建築都市デザイン学部」を新設いたしました。