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太陽光発電設置ビルディングと電気自動車のエネルギーマネジメント

電気電子工通信学科 太田 豊

研究背景・目的

太陽光発電は低炭素電源として導入拡大が期待されているが, 日照量の変化にともなう電力供給の変動性を有する電源であるため, 太陽光発電の設置が想定される住宅, オフィス, 工場などの電力消費とのミスマッチを生じることとなる。このミスマッチを緩和し, 太陽エネルギーの自家消費を向上させる一手段として, 電力貯蔵システムの活用が期待されている。最近では, 交通システムの低炭素化の切り札として太陽光発電と同様に導入拡大が期待されている電気自動車を停車時に住宅, オフィス, 工場の分散型電力貯蔵として活用する技術にも注目が集められている。
本研究では, 太陽光発電を併設する住宅/オフィス/工場などへの電気自動車の導入を想定し, 電気自動車の充電/電力供給のエネルギーマネジメントのポテンシャルや効果を, 太陽光発電, 電力消費, 電気自動車の実データに対する統合的な解析から明らかにする。また, 研究室で太陽光発電と電気自動車のエネルギーマネジメントの通信・制御特性の評価や実現性の確認を行うテストシステムを構築する。

研究成果の概要

1.太陽光発電電力の評価

東京都市大学の新1号館は, 太陽光発電設備と講義室/事務系/研究室/食堂等が併設するオフィスビルディングの典型例である。施設管理課と協議の上, 図1(a)に一例を示すような太陽光発電電力と建物電力消費の1時間値の提供を受けた。夏期のピーク時間帯でオフィス機器・電灯(空調を除く)の2割程度を太陽光発電が供給しているが, 16-17時では建物の影の影響と思われる要因で出力が低下することから電力貯蔵が有効となることが推察できる。出力変動の特徴を把握する観点から, 3号館屋上に太陽光発電電力と相関のある日射量を1分毎に計測する気象観測装置を設置した。同様な観測装置が横浜, 王禅寺キャンパスにも設置されていたため, ネットワークで結ぶ気象観測・収集体制を構築した。

図1. 太陽光発電の評価

図1(b)の測定例のように, 曇天時には急峻な変動が現れるが, 数km離れた地点でも差異があり, 1地点での急峻な変動に応じて電力を調整する必要はないことがわかる

2.電気自動車のエネルギーマネジメント手法の設計と解析

太陽光発電とプラグインハイブリッド自動車を所有する十軒程度の住宅と, 本研究で新たに取得・計測したオフィスの太陽光発電・電力需要のデータセットを整え, 住宅における, ①電気料金の低減, ②住宅用太陽光発電の自家消費, ③地域レベルでの太陽光発電の出力変動の緩和, の三つの観点でのエネルギーマネジメント手法を設計し, 電気自動車が行き来するオフィスへの影響を含め, 有効性を確認することができた。数十台規模の電気自動車の実運用データを追加するために, 長崎EV&ITSプロジェクトの担当者と交渉し, 2016年4月にデータ取得に至っている。

3.太陽光発電/電気自動車のテストシステムの構築

太陽光発電の自然変動とビルディングの電力消費を考慮しながら, 電気自動車によるエネルギーマネジメントを実践するためのテストシステムを構築した。図2に示すように, 太陽光発電やビルディングのデータに応じた電力を実際に発生/消費する定置型バッテリに, フレキシブルな通信・制御系を実装可能な電気自動車のバッテリを連携した構成である。1号館の太陽光発電と電力消費の計測値をオンラインで取り込むことで, 住宅やビルディングの振る舞いを研究室内に仮想実現する準備を進めている。

まとめと今後の展開

本研究では, 住宅とビルディングを行き来する電気自動車の各箇所での電力・エネルギー授受を扱えるデータセットとテストシステムを構築した。平成27年度はエネルギーマネジメント手法の評価に利用したが, 今後も様々な研究課題や研究室公開の機会に活用予定である。横浜, 王禅寺, 世田谷キャンパスを横断する気象観測・収集システムは, 他学科の様々な研究への展開も期待できよう。
本研究の実施に協力いただいた, 施設管理課の皆様, 横浜キャンパス吉崎研究室の皆様, 王禅寺キャンパス岡田研究室の皆様, 湯本副学長, 佐々木特任教授に謝意を表する。

図2. テストシステム

研究成果一覧

成果発表

(1)Y.Ota, “Disturbance Detection of Wide Area Power Systems by use of Short-term Synchrophasor Data”, Proceedings of IEEE PES PowerTech Conference, pp.1-4 (2015-07)
(2)太田豊, “電動自動車の充電・蓄電池利用の配電系統への影響評価とスマート充電制御の実装”, 電気学会自動車研究会, pp.1-4 (2016-02)
(3)Y.Ota, “Integration of Renewables and Electric Vehicles into Smart Grid -Innovative Energy Management Strategies and Implementation-“, Proceedings of International Conference on Grid Integration of Electric Mobility, pp.1-11 (2016-06)
(4)太田豊, 薄良彦, “再生可能エネルギー大量導入時の電力系統のアンシラリーサービスの信号生成”, システム制御情報学会研究発表講演会(SCI2016), pp.1-2 (2016-06)

産学連携への展開

(a)共同研究:東急不動産次世代技術センター, “太陽光発電, 燃料電池, 電気自動車・定置型蓄電池を備えたマンションエネルギーマネジメントシステム(MEMS)の有効性の評価”, 研究代表者 (2016-05~2017-03)
(b)寄附金:パワーアカデミー, “再生可能エネルギー, 電気自動車, 電力システムの協調制御手法の設計と実装”, 研究代表者 (2016-02~2017-02)

2020年4月、東京都市大学 工学部は「理工学部」へ名称変更いたしました。
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