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分子レゴブロックを基盤としたアップグレードリサイクルシステムの構築

エネルギー化学科 岩村 武

研究背景・目的

廃棄物の転換利用は、処分場の不足対策、循環型社会の構築の観点から喫緊の課題である。年間排出量が1000万トンにも及ぶ廃プラスチックは、現状では60%程度しかリサイクルされておらず、さらにその内の約60%はサーマルリサイクルとして焼却され、結果的にはCO2を排出している。このような状況から、プラスチック類のリサイクル率の向上に加え、循環型材料の創製・設計指針の構築が切迫した課題となっている。そこで本研究では、可逆的共有結合形成部位を導入した様々な元素群で構成される分子レゴブロックという構造単位を合成し、これらを高分子化させることでリサイクルが可能な新しいタイプの高分子の合成を試みた。分子レゴブロックの組み換えにより、合成後に様々な物性を容易に調整できることが見込まれることから単なるリサイクルシステムではなくアップグレードリサイクルシステムの構築に繋がることが期待できる。

図1 分子レゴブロックの概念図

研究成果の概要

1.分子レゴブロックの重合と解重合

疎水的なデカメチレン骨格を有する分子レゴブロック1とビスマレイミド型分子レゴブロック(BMI)をジクロロエタン中、60 °Cで48時間反応させたところ、疎水的な分子レゴブロックポリマー3を収率75%で得た。また、親水的なトリエチレングリコール骨格を有する分子レゴブロック2を同条件下で反応させたところ、収率85%で親水的な分子レゴブロックポリマー4を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、解重合性を評価したところ150 °Cで1時間加熱することで分子レゴブロックポリマー3は解重合し、分子レゴブロック1とBMIになることが明らかになった。さらに、同条件で解重合反応を行った後、分子レゴブロックポリマー1とBMIの単離を試みたところ、1 が77%、BMIが73%の単離収率で得られた。

図2 分子レゴブロックポリマーの重合および解重合反応

図3 解重合前後のGPC曲線の変化

2.分子レゴブロックポリマーの組み換え反応と物性の評価

分子レゴブロック高分子3と分子レゴブロック5を、テトラクロロエタン中、110 °Cで1時間撹拌した。さらに、60 °Cで48時間撹拌することにより分子レゴブロックの組み換えを試みた。その結果、収率62%で対応する分子レゴブロック高分子6を得た。得られた分子レゴブロック高分子6の接触角を測定したところ、組み換え反応によって濡れ性を77.7±0.68°から76.2±0.87°に変更することができた。

図4 分子レゴブロックポリマーの組み換え反応

図5 組み換え反応前後の接触角の変化

今後の展望

近年、プラスチック材料は多様化、増加しており、それにともなう廃プラスチック処理の問題が深刻になっている。そこで、環境保全と循環型社会を構築する技術としてケミカルリサイクル技術の発展が求められている。本研究で得られた分子レゴブロック高分子は分子レゴブロック高分子を、別の構造を有するブロックと組み換えることで、高分子を合成した後に物性転換が可能であることが明らかになった。また、分子レゴブロック単位で組み換えることができるため、有機骨格の分子レゴブロックとシロキサンのような無機骨格の分子レゴブロックを組み合わせることによって、有機と無機の特性を併せ持つような高分子材料を合成することも可能になると考えられる。このように、本研究で得られた知見は、リサイクル分野だけではなく、新しい材料の開発など様々な分野で応用することができる可能性が期待されることから、本研究の知見を活用した基礎研究ならびに応用研究のますますの進展が期待される。

関連する研究成果一覧

論文発表

1)Shunsaku Motoki, Takeshi Nakano, Yudai Tokiwa, Kouhei Saruwatari, Ikuyoshi Tomita, Takeru Iwamura*, “Synthesis of recyclable molecular LEGO block polymers utilizing the Diels-Alder reaction.”, Polymer, 101, 98-106 (2016).
2)Takeru Iwamura*, Shu-ichi Goto, Masato Sakaguchi, Yoshiki Chujo.”Synthsis of Submicrometer Zinc Oxide Particles and Zinc Oxide Nanowires Using Microwave Irradiation.”, Chmistry Letters, 45, 508-510 (2016).
3)Takeru Iwamura*, Kaoru Adachi, Yoshiki Chujo.”Synthesis of Organic-Inorganic Polymer Hybrids Utilizing in-situ Anionic Hydrogen-Transfer Polymerization of Acrylamide.”, Polymer, 92, 13-17 (2016).

学会発表

1)中野健・元木駿作・常盤雄大・岩村 武, ”分子内にテレフタレート骨格を有する分子レゴブロック高分子”, 第6回CSJ化学フェスタ2016, P5-105 (東京 2016.11.15).
2)岩田和真・岩村 武, “可逆的な共有結合部位を有するビスイミダゾール型分子レゴブロックを用いた高分子”, 第6回CSJ化学フェスタ2016, P2-103 (東京 2016.11.14).
3)橋本周大・岩田和真・長田直樹・岩村 武, “トリフェニルイミダゾールダイマー誘導体の外部刺激による紫外可視吸収スペクトルの変化” 第11回相模ケイ素材料フォーラム, 予稿集, P14 (綾瀬 2016.8.1).
4)橋本周大・岩田和真・長田直樹・岩村 武, ”トリフェニルイミダゾールダイマー誘導体の外部刺激による紫外可視吸収スペクトルの変化”, 第11回相模ケイ素材料フォーラム, 予稿集, P14 (綾瀬 2016.8.1).
5)篠崎太一・橋本周大・山村英捻・岩村 武, “トリフェニルイミダゾール誘導体の紫外可視吸収スペクトルの変化”, 第11回相模ケイ素材料フォーラム, 予稿集, P13 (綾瀬 2016.8.1).
6)中野健・元木駿作・常盤雄大・岩村 武, “分子内にテレフタレート骨格を有する分子レゴブロック高分子の合成と物性”, 第11回相模ケイ素材料フォーラム, 予稿集, P10 (綾瀬 2016.8.1).
7)北島航弥・猿渡晃平・元木駿作・岩村 武, “分子内にマレイミド骨格を有する芳香族分子レゴブロックの重合”, 第11回相模ケイ素材料フォーラム, 予稿集, P3 (綾瀬 2016.8.1).
8)岩田和真・山村英捻・岩村 武, “フレキシブルなリンカーを有するビスイミダゾール型分子レゴブロックの重合”, 第11回相模ケイ素材料フォーラム, 予稿集, P2 (綾瀬 2016.8.1).
9)岩田和真・岩村 武, “トリフェニルイミダゾール部位を有する分子レゴブロック用いた高分子の合成”, 第65回高分子年次大会, 高分子年次大会予稿集, 65巻, 1号, 2Pd112 (神戸 2016.5.26).

2020年4月、東京都市大学 工学部は「理工学部」へ名称変更いたしました。
併せて、工学部からの改編にて「建築都市デザイン学部」を新設いたしました。